伸びるのはそのゲームの腕前
記憶ゲームを毎日やれば、そのゲームの点数は確実に上がります。問題はその向上が何によるものかです。多くは規則に慣れ、その画面の配置に合った要領ができ、手が速くなった結果です。これをもって記憶力そのものが良くなったと言うのは難しいところです。点数が伸び悩む時期が来たら、そのゲームのコツをほとんど身につけたというサインと見ることができます。
脳トレで伸びるのは多くの場合そのゲームの腕前です。近い転移と遠い転移、反応速度の落とし穴、本当に役立つこと、宣伝文句の見極め方を研究をもとにまとめました。
記憶ゲームを毎日やれば、そのゲームの点数は確実に上がります。問題はその向上が何によるものかです。多くは規則に慣れ、その画面の配置に合った要領ができ、手が速くなった結果です。これをもって記憶力そのものが良くなったと言うのは難しいところです。点数が伸び悩む時期が来たら、そのゲームのコツをほとんど身につけたというサインと見ることができます。
訓練した能力が別の課題に移ることを転移といいます。研究が繰り返し示してきたのは、訓練したものとよく似た課題にはある程度移るものの、性質の違う課題にはほとんど移らないという点です。数字を覚える練習をすれば数字を覚える力は伸びますが、それが勉強や仕事の能力につながるという根拠は弱いものです。
反応速度の測定で出るミリ秒の値は、人の反応だけを測ったものではありません。画面が実際に変わる時刻と入力が伝わる時刻の間に、機器や閲覧ソフトの遅れが挟まっています。同じ人が別の機器で測ると値が変わるのはこのためです。自分の記録どうしを比べることには意味がありますが、他人の数字と絶対的に比べるのは難しいものです。記録を比べるなら、同じ機器、同じブラウザ、似た時間帯で測るのが最低限の条件です。
認知の働きについて比較的根拠がしっかりしているのは、画面の中の訓練より体と生活のほうです。規則的な有酸素運動、十分な睡眠、人との交流が繰り返し確かめられている要因です。脳トレに使う時間がこうしたものを押しのけるなら、かえって損になりかねません。散歩しながらパズルを考えるように、二つを組み合わせる方法もあります。
面白くてやること、短い休憩で気分を切り替えること。それ自体が十分な理由です。問題は「頭が良くなる」という期待を根拠に、お金や時間を大きく使う場合です。何のためにやるのかをはっきりさせておけば、期待が外れて落胆することも減ります。
脳トレをうたう製品は、科学的な言い回しをよく使います。こうした文句を見たら、何が良くなったというのか、それをどう測ったのかを考えれば、ほとんどは見極められます。ゲーム内の点数が上がったというのは、先に述べたとおり、そのゲームに慣れたという意味かもしれません。研究があるといっても、参加者が少ない、比較する集団がない、作った会社自身が行った研究であるといった場合は、結論をそのまま受け取るのは難しいでしょう。
目的を楽しみと息抜きに置けば、脳トレのゲームはなかなか良い趣味になります。そのときは点数より多様さの方が楽しさを長続きさせます。同じゲームだけを繰り返すとすぐにコツとして固まって退屈になりますが、数字のパズル・言葉のゲーム・空間のパズルを交互に遊べば、毎回新しいやり方で考えることになります。家族や友達と同じ問題を解いてやり方を比べてみると、同じ答えにたどり着く道が人によって違うと分かる面白さもあります。
脳トレのゲームを探す理由が、最近もの忘れが増えた気がするという心配なら、ゲームより先に確かめることがあります。睡眠不足、ストレス、気分の落ち込み、飲んでいる薬は、どれも一時的に記憶や集中を弱めることがあります。日常生活に支障が出るほどもの忘れが増えた、あるいは周りの人が先に変化に気づいたという場合は、ゲームで解決しようとするより医療機関で相談する方がよいでしょう。原因が何であれ、早めに確かめることが対処の幅を広げてくれます。